1/23/2011

買取名人


久々の更新.
帰国して2度目の正月も過ぎ,今年はちゃんと写真をやろうと既にいくつかアクションを起こしたのだが・・・それはまた別に機会に.

四谷三丁目〜曙橋の間にあるカメラ買取専門店「アローカメラ」.店主の野田康司さんについては「買取名人」として有名カメラ雑誌に毎回顔写真入り広告が出ているので,いまさら説明するまでもないだろう.

このアローカメラは自宅の近くにあるので,前を通ることも多い.1階はジャンク品を売る店になっているのでときどき立ち寄ったりするが,今回は買取依頼のため初めて2階で名人にご対面した.

手放そうと思った品はオイル滲みで絞り羽根が動かなくなった京セラCONTAX用のDistagon 25mmと,無限遠が出ないスクリューマウントのフジノン55mm.どちらもジャンクなので買い取ってもらうというよりも単に引き取ってもらえればよいと思っていたのだが,Distagonの方にはお金がついた.

カメラやレンズを売ったことはこれまでにも幾度もある.大抵はそれぞれの店で標準買取価格表みたいなものを持っており,実物の状態によって上下するというマニュアル化されたシステムになっている.一方で,買取名人のやり方はまったく違っていて,とにかくいろいろ話しかけてくる.話がちょっと脱線したりして,「今何使ってるの?」「他にどんなカメラ持ってるの?」「○○はいいカメラだよね」などなど.で,最後に「これ(=Distagonのこと),いくらで買ってほしい?」と聞かれた.僕は現在の売値と修理代から考えて値段がつくとは思っていなかったので「言い値で結構です」と応じたのだが,「じゃ,飲み代くらいだけど」といってポンと現金を払ってくれた.

多少気の毒に思ってくれたのか,背後のテーブルの上に積んであった本『野田康司のカメラ四谷快談』を「1冊持って行ってもいいよ」とくださった(しかもサインまで入れてくれた).昨年出たばかりの本で,アローカメラの歴史や買取名人の人柄や哲学に触れることができる楽しい本である.なぜ名人が↑のようなやり方で買い取りをやっているのか,この本を読んで納得.売りたいモノがあるときは,また行こうと思った次第である.

参考資料
  1. 吉岡達也『野田康司のカメラ四谷快談』東京キララ社,2010.