1/28/2007

Rollei 35S


35mm判コンパクトカメラの元祖.天才設計者Heinz Waaskeの設計によるこのカメラの最初のモデルは1966年に登場したが,その小ささは世界を驚愕させたと言われている.事実,ローライ35シリーズの登場によりOLYMPUS PENなどのハーフサイズカメラの時代は終焉を迎え,そのサイズは現在の基準からしても十分にコンパクトであると言える.

35Sは1974年に発売されたモデルで1980年まで製造された.初期のごく少数がドイツで製造された他は,シンガポール製.レンズはCarl Zeissが設計,Rolleiがライセンス生産したSonnar 40mm F2.8 HFT.それ以前のモデルではレンズはF3.5のTessarやXenarだったが,35Sになって半段ほど明るくなりレンズのタイプも変更された.ただコンパクトなだけでなく,ボディ前面の沈胴式のレンズを中心に左右に配置された絞りとシャッタースピードを設定するダイヤル類の配置など,デザイン的 にも非常に優れている(フィルムの巻き上げレバーが普通のカメラと違って左肩にあるが,これも慣れれば問題ない).また,レンズシャッターなのでシャッ ター音が非常に小さく,ミラーショックもないのでブレや周囲を気にする心配もない.

しかし,小さくてかわいい外観とは裏腹に,40mmという標準域のレンズ(=画角としてはRolleiflex 3.5Fとほぼ同じ)を搭載していながらピント合わせは目測という非常に挑戦的なカメラである.また,外部測光の露出計を内蔵しているが,その精度は少々怪しい.しかし,露出とピントが決まれば(このカメラを使い始めたとき,人間露出計&距離計になろうと本気で思った),その写りは現代のコンパクトカメラはおろか下手な一眼レフを凌駕するほど素晴らしい.

持ち歩くときは,ハンドストラップをつけたまま専用のビニールケースに入れている.Rollei純正のフードも持っているが,フードを装着したままだとケースに収納できず,かと言ってケースから出していちいちフードを装着していたのでは軽快な撮影に支障を来す.そんなときCONTAX TVS IIのフィルター径が35Sと同じ30.5mmであることに気付き,TVS II用のメタルフードと専用メタルキャップを試してみたところ,レンズにフィルターとフードを付けてさらにメタルキャップを被せてもケースに収納できた.Sonnarレンズの焦点距離に対して少々フードの長さが短く遮光効果は少ないかもしれないが,ないよりはマシということで,以来同フードとキャップを愛用している.また,レンズ保護用にHeliopanのUVフィルターを常時つけている.

使い方は簡単ではないが,気になる風景を見つけたとき,こんなカメラをポケットからさっと取り出して思いのままに撮影できたら理想的である.

Rollei 35S
Lens: Sonnar 2,8/40 HFT
Shutter: Rollei Compur B, 1/2 - 1/500

参考資料

  1. Rolleicamera.com by John Waller [英語]
  2. Evans, Arthur G. Collectors guide to Rollei cameras. Grantsburg, WI, US: Centennial Photo Service, 1986. ISBN 0-931838-06-1 [英語]
  3. Prochnow, Claus. Rollei 35 family: A review of the history of the Rollei 35 and the corporate history from 1920 to 1995. Braunschweig, Germany, 1994. [ドイツ語・英語]
  4. 『カールツァイスのすべて』 (エイムック193) 枻出版社 1999.
  5. 『季刊クラシックカメラ18』 (特集 ローライ) 双葉社 2002.