3/15/2007

「魚眼レンズ」


円周魚眼写真を撮りたいと,ふと思った.

CONTAX/YASHICAマウントでは,Yashica ML Fisheye 15mm F2.8を所有しているが,これは対角魚眼レンズである.現行の円周魚眼レンズとしてはSIGMAのFisheye 8mm F4が有名である(最近リニューアルしてF3.5になったようだ).生産終了品ではニコンの6mm(画角220°!)や8mm,オリンパスOM用の8mmなどもある.デジタルカメラが主流になってからは,お手軽に手持ちのデジカメに装着して魚眼効果を得られるアダプターも数多いのだが,デジタル用はどれも小さ過ぎてまともなフィルムカメラには使えない.

一眼レフやあわよくばRolleiflexのような中判カメラにも使えるような魚眼アダプターはないだろうか.Rolleiflexに装着するとなると,アダプタータイプのものしか選択肢はない.ネットで調べてみると,どうやら日本のケンコー製のフィッシュアイ・コンバーターという補助レンズが存在するということがわかった.これを35mm判で50mm標準レンズに装着すると円周魚眼になるらしく,しかも主レンズの焦点距離に合わせて絞りを補正する機構を持ち,もちろん中判カメラでも使えるというのだ.既に遥か昔に製造は中止されているが,eBayですぐに入手することができた.ケース,説明書,前後キャップ付の美品でお値段は$50であった.

正式名称は「Kenko Fisheye Conversion Lens」と言うらしい.全金属製で重さは250g.6群9枚のレンズで構成されているなかなか本格的な魚眼レンズである.コンバーターにはねじ込み式のアダプター(説明書によると様々な径のものが存在するようで,僕は49mmと55mmを持っている)が付属しており,これを介して主レンズのフィルター枠に取り付ける.Rolleiflex 3.5Fはバヨネット2型(Bay 2)なので,直接にはつけられないが,幸いBAY2→49mmのステップアップリングがあるのでこれを介して装着できる.必要ならば主レンズとフィルターの間にフィルターを噛ませることもできるので便利である.

フィルム上に結ばれる円周像の大きさは主レンズの焦点距離によって決まる.35mm判の50mmレンズで最適になるように設計されているらしく,50mmレンズに取り付けると像の直径はちょうど画面の上下ギリギリに入る大きさになる.CONTAX+Planar 50mm F1.4で試してみたところ,まずまずの画像が得られた.調子に乗ってYashicaのML 55mm F1.2とも組み合わせてみたが,50mmでははっきりしていた円周の境界がぼやけてしまった.ML 55mmは前玉が大きいため,コンバーターで前を覆ってしまうことでレンズ周辺部への入射光がケラれるためだと思われる.どのようなレンズでも上手くいくというわけではなさそうである(説明書によれば,特にズームレンズとは相性が悪いようである).また,TTL測光は正確ではなくなるため使えない.

二眼レフで使う場合は,まずアダプターをビューレンズに装着して構図を決め,それからアダプターを撮影レンズに移動してシャッターを切ることになるので取り回しは面倒である(構図を決めてからシャッターを切るまでカメラの位置や方向を変えてはいけないので,三脚が必要となる).6x6判の75mmレンズは35mm判で40mmに相当するので,画面全体に対して円周像は少し小さめ(像の直径が正方形の画面の一辺の2/3程度)になるが,正方形の画面の真ん中に真ん丸の像が写るのはどことなく無駄がない感じがしてよい.

自宅近くの風景を3本のレンズで撮影比較してみた.いずれもカメラはCONTAX Aria,フィルムはKodak Portra 400NC,露出は絞りf16,シャッタースピード1/125秒である.



Carl Zeiss Planar 50/1.4 + Kenko Fisheye Conversion Lens



Yashica ML FISH-EYE 15/2.8



Carl Zeiss Distagon 25/2.8

1枚目のKenko Fisheyeは,コントラストが低く色も黄色味が強い.全体的にシャープさに欠け(というかほとんどぼやけている),周辺部に行くほど像の滲みが激しい.逆光にも弱そうで,画面全体がフレアっぽくなっているし(しかし,この日は相当まぶしかったので,それでこの程度ならば許容範囲内かもしれない),六角形の絞りの形をしたゴーストが木の幹から画像中心付近にかけて出ている.総じてクラシックな描写である.2枚目のYashicaは対角魚眼レンズであるが,コントラスト,解像力ともに素晴らしい描写を見せている(色出しはやや黄色いかも).このレンズも逆光にはやや弱く,Kenko同様に木の幹にゴーストが出てしまった.また,同じ露出で撮影したにもかかわらず,このレンズだけ露出がアンダー気味である.何故だろう?3枚目は比較の目的でZeissのDistagon 25mmで撮影した.上の2枚と比べるとこれくらいの広角レンズでも窮屈に見えてしまう.ピントを近距離に合わせすぎたため(被写界深度が深いと思って適当にやっていた),背景の建物の「BUNGE」というロゴや奥のほうの木の枝などを見るとぼやけている.